記事の背景とあらすじ
障害者雇用枠の特例子会社と大手企業系列子会社
どちらが働きやすいのか?
これががTwitterで話題になっていて
じゃあ実際どうなんだろうなーと疑問に感じたので企画をしました
原案こちら↓
Twitterで意見をさらっていくと大手企業グループ子会社は労働負荷が健常者と同程度であるために賃金も高くなるので、ストレス耐性が強いタイプならおすすめできるかな!が僕自身の意見です
それでは、続きです!
特例子会社・事業会社・大手企業グループ会社の正社員で働かれている方に書いていただいた内容をお伝えします
筆者概要
40代、女性、発達障害者
特例子会社は障害者雇用としては2社目、4年ほど在籍しました。
この特例子会社は、発達障害者のみを採用していました。
事業会社1社を経て、現在は大手企業グループ会社の正社員です
グループ内に特例子会社があり、仕事は清掃とマッサージです。
特例子会社を友人に勧めるか?否か?
その人自身の特性や志向と、会社が合っているかどうかだと思います。
発達障害者の特性が様々なのと同じく、特例子会社の特徴も一概には言えないと思います。筆者が書いたことは一例にすぎません。
一つだけ言えるとするなら
キャリアアップをしていきたい人は
特例子会社に長くいない方がいいと思います
友人が勤める特例子会社には障害者の管理職がいるそうですが、キャリアパスはあまりなさそうです。
筆者はかつては事務職スキルや経験の乏しい障害者でしたが、特例子会社にいた4年の間に自分の強みを見いだしてもらい、その分野のスキルを身につけてステップアップできたと感じており、そこはとても感謝しています。
特例子会社の雇用条件
筆者の場合
特例子会社に入る前は
- 事業会社の短時間アルバイト
- 最低賃金に近い時給(月収にして10万程度)
- 事務職歴1年
上記の経歴でした
それに対して特例子会社は
- フルタイム契約社員(1年)
- 額面月収20万
当時の筆者には破格の条件でした。
※フルタイム障害者雇用としては特に高い待遇ではありません
職歴やスキルの少なかった筆者にはとてもいい条件に思えました
意気揚々と退職を告げたことを覚えています
※発足時には特例子会社ではなかったのですが、業務が軌道に乗ってきた頃に特例子会社化されました。これは既定路線であったのだろうと思います。
ほかの特例子会社の中には、もっと月収が少ないが、そのかわり休憩室常設・相談員常駐など、福利厚生面が手厚い会社があるようでした。
特例子会社正社員のメリット・デメリット
特例子会社の正社員とはなにか?
※あくまで筆者が所属していた会社の制度です
特例子会社化後まもなく、「限定正社員」という制度が作られ、入社後3年で問題がなければ契約社員から「限定」正社員になれることになりました。
契約社員から正社員になると給与システムが変わるのですが、年収額を変えずにそれまではなかった賞与を捻り出すために、月収が契約社員のときより下がりました。
こういう現象は他社でもあるようです。
また限定正社員となったときに
本社の人事部の人がやってきてこう言いました。
「あなた方発達障害者は健常者のように仕事ができないので、本社社員と待遇に差があるのは差別ではなく区別です」
上記の発言は現在の法律ではアウトになりそうです
しかし、相手からすれば本音だと思います。
特例子会社の制度とは、扱いが面倒でコストがかさむことが多い障害者社員を、合法的に隔離して低い待遇にしておくためにある、という側面は否定できません。
なぜなら本社で直接採用した場合は、障害者雇用だからという理由で一般雇用と待遇の差をつけることが違法になるからです。
特例子会社には2種類ある
収益をあげることを目標にしているか、していないか
これで特例子会社は2種類に大別できます。
所属していた会社は後者でした。本社から請け負った仕事に対して、いかなる報酬も発生しません。
責任が軽くなる反面、金銭という世の中の共通評価基準が無効で、社員がどれだけ成果をあげても0円にしかならない世界では、業績を評価されて給料やボーナスに反映されることはありません。
就労準備性が低く、ほとんど仕事をしていない人も同じ給料です。
福祉作業所の工賃は作業量が反映されたりするのに?
この点に特例子会社の限界を感じました。
収益を上げることを目標としている特例子会社に転職した友人の会社には、就労準備性の低い社員はおらず、環境・設備・勤務体制に配慮が得られやすいという理由で入社するようです。
収益を上げるために、仕事にある程度の責任も求められます。
前者と後者はかなり雰囲気が違うのだろうと思います。
発達障害だけの特例子会社で働いてた人たち
- 年齢レンジは20代前半〜30代後半
- 就労移行支援サービスを卒業したばかりの第二新卒の人
- 一般雇用で大きな挫折を味わった20代後半〜30代前半の人
- スキルも職歴もあるが、繊細・過敏すぎるために事業会社の環境に耐えられない人
- 学歴が高く、ある面の能力はとても高いが、業務が成り立たないレベルのコミュニケーションスキルの人
働いた経験がほとんどない、就労移行支援サービス出身の若い人の中には「まだ働くのは無理でしょ…」という就労準備性の低い高学歴者が混じっていました。
どういうレベルかというと「物の数を数えられない」「自分が所属する会社の名前を覚えていない」「お茶の入れ方を知らない」というイメージで考えてください
そういう人に、他の障害者雇用社員が仕事以前のことから手取り足取り教えなければならないのですが、教えている人が高卒であったため、教わっている大卒より基本給が低いという現象が起きていました。
一般雇用でしばらく働いて大きな挫折を味わって、障害者雇用、それも特例子会社を選んだ人たちの多くは、特例子会社で焦らず弱点対策をしていき、自信を取り戻して転職していきました。
転職先が一般雇用の人もいました
新卒ではないが、事務職歴が少なくスキルが乏しい人たちは、特例子会社でスキルを身につけて転職する人と、守られた環境にとどまり、仕事以外の生活を充実させることに注力する人がいました。
筆者自身は前者でした
特例子会社が合っている発達障害者は以下
- 感覚過敏などがあり、一般的なオフィス環境の刺激や人間関係に耐えられない
- 体調を崩しやすく、しばしば急に休むことが避けられない
- 一般的な定型の人相手にコミュニケーションがうまくとれず、業務が成り立たない
- 単調な業務の繰り返しでも耐えられる
※個人の経験に基づく意見です
逆に、これらのことが工夫やツール使用などによってクリアできたり、多様性を認めた環境調整をしてくれる会社ならば、事業会社でもやっていけると思います。
大手グループ会社と特例子会社を比較して感じること
大手グループ会社に入ってよかったこと
それは年功序列が強く、年齢が高いと基本給がかなり高いところです
- 特例子会社の年収 240万(残業なし)
- 大手グループ会社の年収 440万(残業時間を含めると500万)
- 大手グループではない事業会社の契約社員時代の年収 300万(残業20時間/月)
- 誰でも知っている大手グループ企業なので世間の名通りが良い(気がする)
- フレックス勤務制度があり、有休を使わなくても通院が可能
残念ながら、これ以外にはいいことが思いつきません…
所属する部門でパワハラや差別が公然と行われているという問題外の会社であることは別にしても、正社員・年収400万超えの待遇につられて、会社の文化や雰囲気・環境が自分に合っているのかよく検討せずに入社してしまったのは自分の落ち度であると思っています。
でもまさか大手グループで
こんな酷い会社があるとは想像できませんでした…
障害者への配慮について
筆者に対する配慮の内容は、一切共有されていませんでした。
先日、どのような合理的配慮をしてきたつもりなのか会社に問い合わせてみました。
すると回答がきました
しかし、そもそも配慮の内容が筆者に合ってなかったし、しかもほぼ提供されていませんでした。
これまで障害者雇用で勤めた会社(特例子会社1社、事業会社2社)では、配慮の内容をいちいち確認しなくても大きな問題が起きなかったので確認してきませんでした。
トラブルを防止するために、配慮の内容は書面などにしてもらって双方で確認しておくことをおすすめします。
※合理的配慮の提供は、現在は企業の「努力義務」ですが、法律が改正されたので3年以内に「義務」となります。
CSRはポーズだけ?
大手のグループ会社は問題を起こしたら社会から注目されて批判されるので、CSRにもしっかり取り組まねばなりません。
それゆえ、人権、コンプライアンス、環境などの社員教育が特例子会社や大手でない事業会社よりもかなり頻繁に行われます。
なので当然、意識も高いはず…と思いますよね?
所属している会社でもしょっちゅうそのような内容のe-Learningを履修することを課されますが、パワハラが横行していました。
内容を理解できていればパワハラは起きないはず。
「ちゃんと教育しました」という実績だけを重視していて、効果の確認をしていないのでしょうね。
大手グループ企業の従業員満足度
給料が全国平均より高く、各種の福利厚生が充実している大手グループ企業、普通に考えたら従業員満足度は高くなりそうですよね。
筆者の所属している会社は従業員満足度がとても低かったです。
その原因は、筆者の見るところ、給料が少しよくても人間として尊重されている感じがしていないために満足度が低いんだろうと感じました。
そして給料に見合った実力がない人が多いので、いやでも転職できません。
ストレスの多い環境にいて逃げることもできない人は心の余裕がなくなり、そばにいる弱い立場の人(部下、非正規雇用社員、障害者etc)への当たりがキツくなります。
これでは障害者が気持ちよく働けるはずもないんです
一般社員も気持ちよく働いてないんですから。
所属企業や志望企業の従業員満足度、知りたいですよね。
公開していたり、聞いてストレートに答えてくれるなら、従業員満足度が高くて自信がある会社なのでしょう。
回答してもらえなかった場合、大手グループ会社は社員口コミサイトに評価が載っていることが多いので、参考にしてください。
たいていは平均以上だと思いますが、平均を下回っていたら要注意かと思います。
外側から見た大手グループ企業社員のメンタリティ
筆者が所属する大手グループ会社の人は上から下まで、グループ外部の人に対して基本的に「すごくえらそう」です。見下しているのでは?とすら思えるほどです。
名の知れた大手にはそういう人が多かれ少なかれいるのでしょうが、外部のサービス業界から来た筆者にはかなり驚きでした。
色々と書きましたが、筆者の所属会社は大手グループ企業でも最悪のケースかもしれません。
数値上はホワイト企業でもメンタリティがブラック企業だと思っています。
ただ、前述したような問題を全てスルーできる鉄のメンタルがあるのならば、よほどのことがない限り解雇されない、寝ていても400万もらえる最高な会社です。数値上はホワイトですから。
実際に休職を繰り返しながらもずっと会社にいる精神障害者の人もいるようです。
特例子会社のストレス、不満点
筆者にとっては、成果をあげてもあげなくても待遇が同じになってしまう、下手すると逆転してしまうシステムと、完全に隔離されてキャリアアップの望めない環境に、根本的に不満がありました。
(今の大手グループ会社も、実は成果を上げてもあげなくても待遇同じなんですけどね)
また、障害者雇用社員(全員発達障害)を管理する定型社員は、どうやら本社で持て余されていたり、会社の都合で行き場がなくなった人たちで、管理職経験がなくあまり能力が高くない人も多かったのです。
最初は素直に定型社員の言うことを聞いていた障害者も、だんだんそれを悟って不満が出てきます。
障害者の中には、ある面では一般人をはるかに凌駕する能力を持っている人もいるので、管理する定型社員の理解が追いつかず、業務に支障をきたすこともありました。
特例子会社を希望するなら、細やかなマネジメント体制が整っているか、自分が望むサポートが提供されているかどうか、よく確認してください。
マネジメント体制がしっかりしている会社は、定着率が良いようです。
雇用率や同じ障害の雇用実績はあまり当てにならないと思っています。
それよりも、定着率や在籍年数を尋ねてみましょう。
「一年間で何人中何人が辞めて、辞めた人の在籍年数がそれぞれどのくらいか」を聞いてみましょう。
1年以下で辞める人が多い会社は合う人が少なそうです。数字を把握しておらず答えられなかったりするのは、都合が悪いからかもしれません。